新たな時代に求められるコミュニケーションのあり方~ダイバーシティ推進のために~

「新たな時代に求められるコミュニケーションのあり方~ダイバーシティ推進のために~」

新潟経営大学観光経営学部で、「ビジネスマナーとホスピタリティ」という講義を担当しています。ビジネスマナーとは、年代を問わず多くの人たちと関わる中で、言葉遣いやお辞儀などの所作で相手を敬ったり感謝の気持ちを伝えたりする礼儀作法。そしてホスピタリティは思いやりの心と共に、性別や国籍の違い、障がいの有無に関わらず「すべての人」に対して公平な情報とサービスを提供するユニバーサルサービスという考えが基本にあります。共に大事なことは、心のバリアを取り払って自分の心を開き相手と心を通わせることです。とはいっても、良かれと思ってしたことが、相手にとって必ずしも嬉しいこととは限りません。学生には、あらゆる立場の人たちに対応するには、言われなくても「気づく」観察力や共感力と、その状況を把握して適切な対応をするための「知識」が必要だと教えています。

ところで、SNSの普及によりコミュニケーションの取り方が大きく変わりました。学校からの緊急連絡は連絡網を使っての電話ではなくメール配信に、家族や友人ともメールで連絡し合うことが増えました。同じ空間にいてもスマートフォンでやり取りしているのは、今やデジタルネイティブ世代の若者だけではありません。メールよりも電話、電話よりも面と向かって伝えることの方が確実であると、その重要性を学生に説明しても理解されないのは仕方がないのかもしれません。デジタルコミュニケーションが主流となった現代、リアルな対話は減っているかもしれませんが、だからといってコミュニケーション力の低下や不足が生じているとは言えないように思います。

1.気持ちを気軽に伝え合っている

スタンプや単語を使うSNS会話の魅力は、なんといっても気軽さ、手軽さです。嬉しい時、悲しい時、感謝を伝えたい時、気持ちを様々なスタンプが表現してくれます。私自身もそうですが、他愛もないことを家族や友人にスタンプで伝えることがあり、これまで以上に気持ちを通わせることができています。

2.多くの人たちとつながっている

娘の高校の合格発表があった夜のこと。SNSで合格者数十人のグループができていて、実際に会ったことがない人たちとつながって交流していました。現代は、ネットで知り合う機会も、つながっている仲間も多いといえるでしょう。博報堂生活総合研究所「みらい博2019」によると、日本人はInstagramインスタグラムの#ハッシュタグ検索回数が世界平均の3倍(資料1)だそうです。日本人は、好きなことや興味のあることなど自分との共通点を検索して共有したい、つながりたいという欲求が強いようです。

3.自分を伝える人たちが増えた

日々、SNSで自分の行動や好きなものを発信することで自己開示することへの抵抗が小さくなり、心の内を発信する人たちが増えました。人々のリアルな言葉がネット上にあふれています。先の博報堂「みらい博2019」によれば、世帯やライフステージ、接触メディアなどの多様化が進んだ結果、みんなの共通項が成立しにくくなった、つまり「標準が崩壊」する時代に入っている(資料2)そうです。まさに、多様な趣味嗜好や価値観を持つ人々が存在しており、私たちはそれを自然に受け入れているのです。

これからは、「違い」を積極的に活かすことにより多様な人材を活かす、ダイバーシティマネジメントが求められる時代です。意見が対立した時には、まず相手からの情報を正しく受け取る「確認」、相手の立場で考える「共感」、そして「承認」を繰り返してその距離を縮めていく必要があります。理解してもらうには、言うべきことを自分の言葉で伝え続ける、そして受け取ったことを言葉で態度で相手に届ける、双方向のやり取りが大切です。

デジタルネイティブ世代に不足しているのは、顔色を窺ったり肌でその雰囲気を感じ取ったりと様々な感覚を研ぎ澄ませて行うリアルな対話です。自分の言葉で目の前にいる人の表情がさっと変わってしまった時にどうすることもできずに黙ってしまう、またリアクションの薄い無表情な人々が増えていると感じます。自分の気持ちを伝える時には、受け手の気持ちを考えて言葉を慎重に選び、豊かな表情や声で相手に伝えることを怠ってはいけません。多様なコミュニケーションツールを使い分けて、相手と言葉と心を十分に通わせ互いの違いを尊重して理解し合う、その存在をリアルに確かめ合うことを大切にしていってほしいと思います。

寄稿 リバーバンクリポート2019summer 特集「ダイバーシティと女性の力」

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