「さりげなく」

Kアプローチ エッセイ 砂山

以前、新潟市中央区の砂丘館(旧日本銀行新潟支店長役宅)で開かれていた「季節のしつらい教室」に通っていました。自然のうつろいを生活に折り込み、また様々な願いを込めることで生まれた日本の年中行事。しつらい(室礼)は、季節のものをただ飾るだけではなく、中国古来の陰陽五行(いんようごぎょう)の考え方に基づいていて、その意味を知れば知るほど、古くから続いてきた日本文化に興味をかきたてられました。

7月7日の七夕は、邪気を払って健康を願う五節供のひとつです。飾りを付ける笹は精霊の依代であり、五色の短冊には、それぞれ「信・礼・仁・智・義」の意味があります。また、天の川をわたる船の舵取りにかけて梶の葉が飾られることもあります。こうしたことを知っていると、飾りを目にした時の心の持ちようが違ってきます。しつらいは高価な品を華やかに装飾したものではありませんが、見た目以上に準備に時間と手間がかかる場合があります。それだけに、家人のもてなしの心が、さりげなくすっと心に沁みこんでくるのです。

「さりげなくありたい」それは私自身が仕事でも心がけていることです。司会では、喋りすぎないように引き立て役に徹する。その場にふさわしい言葉を短く添えて、場を盛り上げたり和ませたりする。

そよ風のように相手の心をそっと揺らすような、そんなさりげない対応ができるようになりたいと思います。

新潟商工会議所会報 2016年(平成28年)7月号 随想砂山
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