「一座建立〜場を整える〜」

「日本建設業連合会北陸支部機関誌『ゆう』58号掲載」

心地よい緊張感。手元だけでなくお客様の動きも気にかけながら、お茶を点てる。

1年前からテーブル茶のお稽古に通い始めました。社員研修でマナーを教えることがあり、所作や相手への気遣いなどを学んでいく中でたどり着いたのが茶の湯。本格的なお稽古は敷居が高いイメージがありますが、テーブル茶は椅子に座って、お盆の上に茶器を置いてお茶を点てるという、初心者でも気軽に楽しめるお手前です。

お稽古を通じて思うのは、心を整えることの大切さです。例えば「賓主互換」とは立場が違うことを意識したうえで互いに歩み寄ろうということですが、これが上司と部下、クライアントとのやりとりなどビジネスにおいても基本になることです。他社との関係を築くには、自分の在り方や役割を考え、その場を落ち着いて受けとめなければ、相手のことを思いやる心の余裕が持てないものです。

司会をする時に心がけているのは「場を整える」こと。司会者の表情、声のトーン、佇まいなどでもその場の雰囲気が変わります。厳粛な式典では緊張感を高める場に、また、挨拶をする人が話しやすくなるようにと、柔らかな口調でご紹介するなど、その時々にふさわしい場になるように司会者としても心を配っています。

茶事も司会の仕事も、「一座建立」。その場に居合わせた人たちが互いに心を合わせて時間を共有する、さりげなくそんな場を整えられるようになりたいものです。

引用文献 「自分を生きてみる」千宗室著/中央公論新車

「日本建設業連合会北陸支部機関誌『ゆう』58号掲載」